なぜ、00が嫌いなのか。

まず、筆者は機動戦士ガンダム00が嫌いである。
以下の文章はそんな個人的感情の理由に関する自己考察なので、
目を通す際はそのつもりでお願いします。
というか、できれば00のファンの方は目を通さないでください。
よろしくお願いします。
 
 

00におけるモビルスーツ

00は、モビルスーツを兵器として描くことには成功していると思われる。
各国のモビルスーツの開発、運用思想の違いや、それに伴うデザインの違いであったり、
大国で開発された兵器が世代交代していく中で、古い兵器が諸外国に流出し、
より小さな戦場において実戦に投入されていく、という兵器の拡散も表現されている。
この辺りがミリタリーファンの心を掴む糸口になっているのだろう。
 

物語としてのガンダム00

しかし、ガンダム00のストーリーには筆者は及第点すら与えることが出来ない。
何が表現したかったのかわからないのだ。
主人公は最終的に組織の裏切り者を成敗し自らも表舞台から去るが、
皮肉にもその裏切り者の内通によって、
分裂していた世界は表向き、一つにまとまることになった。
主人公をはじめとしたガンダムパイロットたちはことごとくいずこかへ消えたり、
戦死したりと、その後の世界に跡を残さない。
結局、「表向きは」一つにまとまった世界が残っただけである。
もちろん、矛盾を抱えた主人公たちの理想は実現されるどころか、その矛盾すら解消されていない。
結局、ガンダム00とはなんだったのか。
第1話においてグラハム・エーカーが主人公の、ひいては作品の抱える「矛盾」を登場人物として指摘していたことが、
今となっては単なる言い訳だったのではないかとすら思えてしまう。
1stだけでは完結しないのだ、という向きもあるだろう。けれど、筆者は2ndにも期待していない。
 

登場人物たちの想い

もうひとつ不満なのが、登場人物たちの人間味の無さだ。
特徴的な言動を見せるキャラクターは非常に多い。
特にグラハム・エーカーはその凄まじいまでのガンダムへの執着を
全編にわたって朗々と謳いあげ続け、ガンダム00を代表するキャラとしての地位をほしいままにしている。
だが、彼らが本当のところ何を思っているのか、何を感じているのかは、正直よくわからない。
感情を表に出さなかったり、出番が少なかったり、どこかで聞いたことのあるような陳腐な台詞や、
誰でも言えるような一般的な台詞しか言わなかったり、グラハムのようにただ一つの感情しか表に出さなかったり。
それは主人公たちガンダムマイスターにも言えることである。
今まで何の疑問も持たずに淡々と任務を遂行してきた主人公が、
過去の自分を思わせる戦場の子供たちを救えず、「俺はガンダムになれない」などと急に言っても、
正直ピンとこない。
感情移入がしにくいキャラクターが多いのだ。キャラクターの内面を描ききれていないと感じる。
 
内面を感じられないキャラクターは人間としてみることが出来ない。
彼らは人間ではなくあくまでキャラクターであり、物語の進行に応じて決められた役割をこなし、
決められた台詞を喋り、決められた行動をとり、決められたタイミングで死ぬ。
筆者はガンダム00の登場人物たちを、そんな操り人形のようなものとしてしか見られない。
少し、かわいそうだ。
 

00における「戦争」

ガンダムを名乗る作品はその性質上、どうしても「戦争」を扱わざるを得ない。
日本人がここ60年体験していない、圧倒的な非日常である戦争に直面したとき、人は何を想い、何を為すか。
ガンダムを名乗る以上、この問題を避けて通ることは出来ないはずである。
そしてガンダム00において、キャラクターを通して表現されている「戦争」は、
 
まるでゲームのようである。
 
主人公たちが訓練を受けたガンダムのエキスパートであることもその原因の一つだろうが、
それを差し引いても、00の「戦争」からは「必死さ」とか「恐怖」とかいったものが全く感じられない。*1
どこにでも即座に現れるガンダム、殺陣の斬られ役のように次々と現れる量産型モビルスーツ
圧倒的不利な状況下から「撤退する!」の一言で即座に撤退するグラハム・エーカー
そこにあるのは、直接戦争と向き合うわけでなく、兵器のカタログスペックを並べて戦略シミュレーションを行う
ミリタリーファンの皮膚感ではないのか*2
 
ロックオン・ストラトスが死んで泣くのは彼の秘めた熱さを知っているためではなく、
彼が三木眞一郎の声で喋るイケメンだからであり、
クリスティナ・シェラが死んで泣くのは彼女の想いを知っているためではなく、
彼女が巨乳を強調するファッションを着こなす美女だからではないのか。
 
おっと、話がそれた。
 
願わくば2ndにおいて、主人公たちだけでなく、様々な人物がもっともっとピンチに陥り、
もっともっと秘めた感情を爆発させることを。そういう秘めた感情が設定されているのであれば、の話だが。

*1:それが唯一感じられたのが第1話冒頭の刹那の過去のシーンだ。このシーンを見たときは期待したのだが・・・

*2:ミリタリーファンを批判しているのではない、念のため