仮面ライダーキバ 第9話 第10話

第9話を観た時点であまりの突っ込みどころの多さにどうしようかと思ったのだが、
第10話を観た後で思い返すと突っ込みどころが残っていないという不思議なエピソードだった。
要するに「お父さんとの約束を守れなかった私が悪い」のである。
単純な話ではあるが、グッと来るものがあった。意外ではあったけれども。
 
そして今作最も注目すべきキャラクター、「名護=イクサ」がついに変身。
何に注目すべきかと言ったらそのキャラクター性そのものである。
「正義」を自称し、己の正義を貫くためならば敵はおろか肉親にすらも情けをかけることはない。
この世に現れた「セイギノミカタ」を、その「危険性」を名護は体現しているのだ。
 
「私の言うことは常に正しい、君は私の言うことを聞いていれば良いんだ!」
 
彼は常に、「自分の中の普遍的な正義」を信じて疑うことがない。
そしてその正義は常に実践されるべきだと考え、事実、それを実践し続ける。
果たして彼の正義と主人公たる渡の正義は真っ向からぶつかり合った。
当然である。人の数だけ正義はあるのだから。
「セイギノミカタ」は、渡の目には「無慈悲なる殺戮者」として映る。
  
「正義の味方」が正しく存在するためには、「悪の手先」が必要不可欠なのだ。
絶対的な正義は、絶対的な悪の対存在としてしか存在し得ないのである。
そして、正義を証明するための悪がその絶対性を失ったとき、正義の絶対性もまた崩壊する。
 
名護が掲げる正義は、「旧来のヒーロー像」を象徴しているように感じられる。
要は「出たなショッカー!」であり、「ゴルゴムの仕業だ!」であるわけだ。
そのあまりの「相手を顧みない絶対性」は、
「敵と同種の存在である」という仮面ライダーの枠の一つから完全に逸脱し、
あまたの能力と数々の奇跡によってまさに絶対的な強さを誇った「ブラックRX」を髣髴とさせる。
今回のメインライターである井上敏樹が「RXは嫌い」とインタビューで語ったこと、
そして今回のイクサのスーツアクターがブラック、ブラックRXを演じた岡元次郎であることは、
果たして偶然といえるのであろうか。